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ことにした。またこれらにはその沿岸域での地域性がかなり強いものと思われる。
工法および施設整備についての総合的な評価には社会性や経済性、それに地域住民にとっての快適性なども必要とされる。評価方法についての現状と今後の方向、課題についても考察してみたい。
2. 浄化工法の種頼と内容
地球の表面の70.8%が海であり、海は地球上の水の98%を占めている。例として東京湾の海水量を地球の全海水量からみると100万分の1程度である。海水の大部分は自然水であり、それに汚濁水が希釈されるとすれば十分な容量であると思われるが、汚濁水が一海域に潜水すると、その地域での生態系に影響を及ぼすことになる。地域での状況に応じた対応が必要である。
これまでに実施された海域での主な浄化工法1)を整理すると16工法あり、これらは水質浄化、底質浄化及び海浜整備に三分類できる。Table-1に海域浄化工法の分類を示す。

Table-1 Classification of seawater purification works

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水質浄化および底質浄化に含まれる各工法は、内部負荷を直接除去するかまたは減量するものである。海浜整備に分類した各工法または施設整備は、自然の自浄能力による浄化を期待したものである。
これらの工法および施設整備は、最近では全国各所で用いられているが、その事業計画と浄化効果の実績が学会や機関誌等に報告された例はそう多くない。報告されたものについて工法ごとの数をハレート図で示したものがFig-1である。2),3)
砂浜については一部養浜工と合わせて人工海浜として造成されたものの例が多く、実施後の生物相の変化の調査も多くなされている。溶出による汚濁負荷源である底質については、そのまま浚深により除去してしまうと言う単純な工法が多く実施されている。ただしこの工法は浚渫した汚泥を含んだ底質土の処理方法と処分場所を考慮する必要があり、どこででも実施できる工法ではない。底泥を砂で覆ってしまって栄養塩類の溶出を防ぎ、かつ砂による清浄な海底にして生物の活動の場を提供する覆砂工法は実施例が少ない。

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Fig-1 each case number of seawater purification works in Japan

(From report in general publications)

実験例はかなりあるが、砂面上にすぐまた新たな汚泥が堆積しはじめること、薄層(数十cm厚)で砂を撒き出す技術が難しく費用が掛ることなどが影響しているものと思われる。礫間接触酸化については適当な大きさの石による石積堤によるもので、構造も浄化機構も単純なため好まれている。干潟は砂浜に較べてかなり大きな面積を必要とするが、自浄能力による浄化効果が大きいためよく計画されている。緩傾斜石積護岸は構造が簡単であり効果も大きいことからよく用いられている、礫浜は砂浜にした場合砂が流されてしまうような場所で使われている。導水工法による希釈は開削作零等に関わる補償問題があり余り用いられていない。水生生物の利用は海藻類の定着技術の研究開発が行われている段階である。これらの浄化工法は用いる浄化技術と対応している。水質浄化工法と底質浄化工法については技術と工法がほぼ1:1で対応している。例外は礫間接触酸化ととブラントによる浄化である。海浜整備での工法または施設整備はそれぞれが複数の浄化技術を利用している。定性的に見た浄化工法と利用技術との関連関係をでTable-2に示す。
Table-2は横軸に利用技術を、左から右ヘソフト的な技術からハード的な技術の順に並べ、縦軸は浄化工法を利用技術の並び順に対応させて上から下に並べてみたものである。
なお浄化工法は水質浄化工法と底質浄化工法のみについて示したものである。

 

 

 

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